網走 刑務所と流氷


網走刑務所

網走湖とオホーツク海の間を流れる網走川沿いに建てられている網走刑務所は、日本最北端の刑務所として知られています。

明治維新後の日本は内乱が多発し、どこの刑務所も受刑者で溢れかえっていました。また、日本経済を発展させて軍事力を高め、ロシア帝国からの脅威に立ち向かうためにも蝦夷地の開拓が必要だったのです。

そこで国は網走刑務所(当時は網走囚徒外役所と呼ばれていた)を開設し、重罪な受刑者を集めて、網走市から北見峠を結ぶ中央道路の建設を課せました。

荒地の開墾や熊との戦い、厳しい環境下での作業は過酷を極めます。栄養失調や作業中の事故などで200人以上の死者を出しながらも、わずか1年で道路は完成。

囚人道路とも呼ばれる中央道路のおかげで、網走までの流通の便が格段に良くなったのでした。

その後も刑務所では飽和状態が続き、受刑者に与える仕事が不足しました。

そこで民芸品として「ニポポ」と言う木彫りの人形を作成する仕事を受刑者たちにさせます。「ニ」は木、「ポポ」は子供や人形という意味があるアイヌ語。

見た目はこけしに似ていますが、どこか素朴で愛らしい顔はほっこりさせてくれます。1つの台座に男女一対のニポポを並べて飾ることが多く、まるで雛人形みたいです。

二ポポは幸運や魔除けのお守りとされており、二ポポに願い事をすると叶うのだとか。願い事が叶ったら二ポポに首飾りなどの装飾品を飾る習慣があることも覚えておきましょう。

元々は受刑者の仕事のために作成された二ポポは現在、網走市の民芸品として、お土産に大変人気になっています。それだけに網走市の街の中(街灯や橋の欄干など)には、あちこちに二ポポが隠れています。

大きくて直ぐに見つかるものから小さくてひっそり隠れている二ポポまで、いくつ見つけられるか・・・探してみてください。

ちなみに網走市のご当地キャラは「ニポネちゃん」。二ポポとクリオネを合体させた可愛らしいキャラクター。性別は男でも女でもなく、背中のマントで空を飛び、悪を退治して網走の平和を守っています。胸に付けたバッジは網走市の花「エゾムラサキツツジ」。

また、全国で4つしかない堀のない開放的施設を持つ刑務所の1つで、網走刑務所から約7㎞離れた「二見ケ岡農場」では模範囚が堀の外で農作業を行っています。畜産を行っているのは全国でも網走刑務所だけ。

ここで育てられた黒毛和牛はA5ランクを獲得するなど、「網走監獄和牛」として人気のブランドになっています。

網走監獄和牛は、網走刑務所横の売店「エームサービス㈱網走刑務所売店」(矯正作業製品即売所の裏側)で冷凍肉を購入できます。博物館網走監獄の土産屋では販売していないので、購入希望ならリアルな刑務所まで行きましょう。

かつては日本一過酷な刑務所として知られ、同時に北海道の開拓に大いに貢献した施設ともいえる網走刑務所は現在、普通の刑務所として稼働するようになりましたが、今でも網走の観光に貢献しているといえます。

博物館網走監獄

網走刑務所改築の際に古い建物を保存しようと、元あった場所から約3km離れた場所に移築や復元をして、昭和58年(1983)に「博物館網走監獄」として開館しました。

博物館網走監獄は東京ドーム約3.5個分の大きさがあり、見応え充分!一番古い建物で100年以上の歴史があります。

中は随所にマネキン人形が使われており非常にリアル。

マネキン人形って、覗き込むと動くのでは?と思ってしまい、少々不安になりませんか?実は博物館網走監獄のマネキン人形は、何体かは本当に動きます!これにはビックリ。

実際に使われていた建物や復元した建物の中を見て回りますから、囚人や看守と同じ空間や目線で見学することができ、当時の囚人たちの生活がいかに辛いものであったのかを分かりやすく理解できます。

同時に看守もまた厳しい職務であったことが伺えます。

それは「赫い囚徒の森」体感シアターでも知れますので、是非見学してみてください。

博物館網走監獄で特に有名な建物が、重要文化財に指定されている「五翼放射状平屋舎房」です。明治45年(1912)から昭和59年(1984)まで70年以上も間、実際に使用されていました。

文字通り5つの平屋舎房が中央見張り部屋から放射線状に建てられており、監視しやすい工夫がされています。実際に訪れてみると美しい建物ですが、雑居房は狭くて薄暗く、冬はストーブを付けてもマイナス度にしかなりませんでした。

ここに来たら前後左右だけでなく上も見て、昭和の脱獄王と言われた「白鳥由栄(しらとりよしえ)」を見つけましょう。パンフレットでも使われている有名なシーンがそこにはあります。

彼は26年の服役中に4回もの脱獄に成功していますが、脱獄の理由は当時の刑務所が囚人に対して余りにも理不尽だったから。白鳥由栄の脱獄によって囚人の扱いが改善されるきっかけになったそうです。

旅の思い出に監獄ならではの体験コーナーがあります。

まずは網走監獄入獄写真から。テレビや映画でよく見る、囚人を正面と横から撮影する写真をプリクラ感覚で撮影できます(300円)。

また、当時の囚人が着ていたオレンジ色の囚人服を着て鎖に繋がれてみたり、足かせをつけて歩いてみたりと、囚人気分が味わえます。

そして、実際の刑務所で食堂として使われていた重要文化財「網走刑務所旧二見ケ岡農場食堂棟」では、監獄食が食べられます。当時の監獄食は「くさい飯」と呼ばれるほど独特の臭いがしたそうですが、観光用の監獄食は当時のレシピの再現で、美味しくてヘルシーになっています。

博物館網走監獄は、囚人になったら大変だという事や、罪を犯してはいけないという事を伝えているわけではありません。

もちろんそれも大切ですが、網走刑務所が囚人にも看守にもいかに厳しい場所だったのか、どんなに過酷な環境課の中で北海道の開拓に貢献したのかを、私達に伝えてくれる施設です。

じっくり見学すると数時間ほどかかります。内容も濃いので、事前に予備知識を入れておくとより深く理解できます。

流氷観光

冬の時期に網走に訪れた人だけが楽しめるのが「流氷観光」です。

北半球の流氷がオホーツク海まで南下してくる事はとても珍しく、網走で見られる流氷は「奇跡の流氷」と呼ばれるほど。

流氷を見るためのベストシーズンは、2月中旬〜3月上旬頃。肉眼で確認できるのは1月下旬頃からですが陸地に近づくのはそれから数週間後になりますので、なるべく近くで流氷観光をしたいならば、ベストシーズンを逃さないように。しかし、近年の温暖化により流氷が年々少なくなっているのだとか。残念です。

流氷を間近で見るためにおすすめなのが「網走流氷観光砕氷船おーろら号」への乗船です。流氷を砕いて進むクルーズは迫力満点!同型の船と比べ約2倍もある馬力と船そのものの重さで、流氷を砕氷する仕組み。

展望デッキからの眺めは左右に広がる流氷のパノラマと、氷を砕く音や衝撃が感じられ、他の観光クルーズでは味わえない体験となります。運が良ければ流氷の上でくつろぐアザラシや天然記念物のオオワシなどを見られるかも。

おーろら号は、冬期は毎日運行(乗船人数や天候により運休になる場合あり)していますが、流氷は絶えず移動しています。例えば午前中に流氷が見られても、午後には流氷が移動して全く見られないこともあります。

こればかりは自然が相手でどうしようもありませんが、インターネット(網走流氷観光砕氷船HPや海氷情報センターなど)で流氷情報を得られ、北風なら流氷が接岸しやすくなるので、間近で見られる確率がグッと高くなります。

おーろら号は沖合10kmほどまで運行してくれ、流氷がある場所をめがけてコースを変更するなど、ある程度の融通をきかせてくれる観光客に優しいクルーズになっています。

約1時間の真冬の海上クルーズですから、完璧に温かい服装で出掛けてください。

オホーツク流氷館

夏に流氷が見たい!という願いを叶えたい人には「オホーツク流氷館」がおすすめ。本物の流氷が展示されており、触ることも可能です。

濡れたタオルを振り回して凍らせるマイナス15度体験は、大人も子供も楽しめます。上着の貸し出しがあるので温かい服装で向かわなくても大丈夫。

可愛い天使「クリオネ」にも会えます。

オホーツク海の塩を使った「流氷ソフトクリーム」は一押し!海藻由来の天然色素で色付けされた青い塩が振りかけられて見た目もお洒落。塩キャラメル味で350円。

網走市で一番高い山「天都山」の展望台に併設されていますので、オホーツク海や知床連峰、網走湖など一望できます。

空からのアクセスと、お得な観光路線バス

北海道の北東部、オホーツク海に面している網走市は、道外からは少々遠いイメージがあります。

しかし、女満別空港から網走市までは車で約30分。

そして女満別空港へは、札幌(新千歳)・羽田・中部(名古屋)・関西・伊丹、とそれぞれ直通便があり、羽田↔女満別間なら約1時間50分のフライトで到着。

網走市は案外簡単にアクセスできる身近な都市なのです。

「あばしりフリーパス」を利用すれば、女満別空港から網走市内まで、各観光施設、市内全線が乗り放題で、温泉やお食事処で使えるクーポン付き!宿と飛行機の手配だけでフリープランな旅行を楽しむ事もできちゃいます。

2Dayパス・大人/2,000円・小人/1,000円
3Dayパス・大人/3,000円・小人/1,500円

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