秋保温泉


杜の都仙台の奥座敷として知られる秋保温泉。その歴史は古く、1500年前には温泉として知られていたと伝えられています。秋保温泉は「あきうおんせん」と読み、秋生→秋保と変化しました。

秋保温泉は東北一の大都市、仙台から車で約30分の距離でありながら、温泉と共に自然を満喫できるとして、仙台観光の宿泊地としても大変人気のエリア。逆に秋保温泉に宿泊して仙台観光に出掛けても良いです。

仙台からは日帰りで訪れることも十分可能な範囲なので、秋保温泉の各旅館では、森の温泉ランチと称して、各宿自慢の豪華なランチと日帰り温泉がセットで楽しめるプランを用意しています。

旅館によっては仙台駅発着の無料送迎も行っているので、華やかな都会仙台から離れて、静かな温泉街でゆっくりした時間を楽しむのも良さそうです。

秋保温泉には、他の有名な温泉街にあるような土産通りや射的等の昔懐かしいゲーム屋、食べ歩きができる歓楽街がないので、単純に温泉をゆっくりといただくための温泉地になっています。その代わりに景観を楽しんだりローカルフードに舌鼓をうったりと、別の楽しみが待っています。

秋保温泉にはこんな伝説があります。

ある時、塩を積んだ牛に女子童が乗りました。牛が谷を渡ろうとした時、牛もろとも女子童は谷底に落ちてしまったのです。そこから秋保温泉が湧き出しました。湧き出した温泉は塩辛く、実は、女子童は湯神様の化身だったのです。

弱塩泉である秋保温泉は皮膚病に効果があり、肌がすべすべになります。また、その塩分濃度の高さから、一度体が温まると冷めにくい効果も期待できます。

伊達政宗が度々訪れて戦の疲れをいやしたと記述が残されているほど、名将も愛した秋保温泉の魅力を紹介します。

磊々峡

名取川が秋保石の大地を浸食して作り出した峡谷「磊々峡(らいらいきょう)」。浸食は古墳時代から始まります。

昭和6年(1931)には、夏目漱石の門人・小宮豊隆が「磊々峡」と名付けました。難読ではあるものの、センスがあるネーミングだと感心しますね!「石が3つ」で成り立っている漢字「磊」は、石がいくつも積み上がっている様子を表しています。文字通り磊々峡は、覗橋(のぞきばし)を中心に約1km続く奇岩地帯。

遊歩道が整備されているので散策しながら奇岩を見て回りましょう。ゆっくり歩いても往復で50分ほど。途中にはいくつもの見どころポイントが登場します。

  • 斧で真二つに割ったかのような「天斧巌(てんおのいわ)」
  • 人の顔のように見える「奇面巌(きめんいわ)」
  • 八の字に見える「八間巌(はちけんいわ)」
  • 岩肌をサラサラと流れ落ちる「時雨滝(しぐれたき)」など

案内板を見ながら探し歩くのが面白いですよ。

覗橋から見える「覗橋ハート」は、雨水が溜まるとはっきり見える幸運のシンボル♡

偶然できたとは思えないほど、可愛らしいハートの形をしています。

毎年秋に磊々峡周辺で「もみじのこみちライトアップ」が開催されます。見学は無料ですが、受付でマップを頂けるので、まずは受付に寄ってから順路に沿って歩くと、テーマに合わせて趣向を凝らした演出が次々と登場。色とりどりのライトが散策路や磊々峡を照らし出し、それぞれが一つの作品として見事に完成しています。

開催期間中は足湯も19時30分まで営業。秋の夜長に名取川の流れる音を聞きながらのライトアップ見学と足湯、最高のシチュエーションです。所要時間は20~30分ほどですが、秋の夜は冷え込むので暖かい服装で出かけたいです。

同時期に「秋保ナイトミュージアム」も行われます。開催地は覗橋から約2km離れた天守閣自然公園。

こちらもまたデザイン性のあるライトアップで、さらに面白い仕掛けが隠されています。特に池に映る紅葉は実に幻想的!

秋保ナイトミュージアムは有料で、入場料は中学生以上450円・小人100円。

※園内の足湯が無料で利用可能

※当日の市太郎の湯・木の家ロッジ村の利用者は入場無料

仙台秋保醸造所(秋保ワイナリー)

2015年12月に宮城県初のワイナリーとしてオープンした仙台秋保醸造所は、秋保温泉の新たな観光スポットとして注目を集めています。南に面している敷地にはきれいに並んだぶどうの木々がすくすくと育ち、そこから秋保温泉が一望できるなどロケーションは最高です。

坂を登りきった場所にあるので、風が心地良く抜けていきます。

そもそもなぜ秋保にワイナリーなのか・・・

仙台秋保醸造所の代表取締役・毛利親房さんはお酒に弱く、農業やワイン作りの知識や経験が全くありませんでした。しかし、東日本大震災からの復興関連の会議に参加するうちにワイン作りを思いつきます。また、かつて宮城県南部の山元町に唯一あったワイナリーが震災時の津波で流されてしまったことも、毛利さんを後押ししました。

仙台へのアクセスが良くぶどう栽培に適した気候、また秋保町は毛利さんにとって馴染みのある町だったことなどが、秋保にワイナリーを造るきっかけになったそうです。

毛利さんは、ぶどう栽培は土にこだわり、宮城県の食に合うワイン作りを目指しています。

仙台秋保醸造所の建物はそれほど大きくはありませんが、構えも建物内もおしゃれなカフェのような造り。バーカウンターで注文するテイスティングワインは40㏄が200円、90㏄が400円で、様々なワインを楽しめます。

つまみには蔵王チーズ・伊豆沼産発酵生サラミ・クラッカーの「おつまみプレート」500円や、蔵王チーズのピザ300円などいかがですか?天気が良い日には屋外で簡易BBQ(要予約)をしながらワインを頂くのも気持ちが良さそうです。

スコーンプレートランチやソフトドリンクなど軽食もあるので、アルコールが苦手な人や子供も一緒に楽しめます。

建物内奥にある醸造設備はガラス越しにいつでも見学が可能。試飲する前にワインが作られている場所を見学すると、より一層親しみを持って味わえます。

ワインのエチケット(ボトルに貼られているラベルのこと)もお洒落で、秋保ワイナリー初のオリジナルワイン「秋保メルロ」のデザインは、伊達政宗の命で建てられた「瑞鳳殿」にある善応殿の飾り扉の模様を万華鏡風にしています。こんな細かいところからも宮城への愛が感じられます。

ワイナリーがオープンしてから年数が浅く、現在はまだ敷地内で栽培されたぶどうを使用してのワイン作りは生産量が間に合っていない状況ですが、様々な品種の自家製ワインが飲めることを楽しみに待ちましょう。

覗橋から徒歩5分と近いですから、秋保温泉に宿泊するのであればドライバーの方もテイスティングができますよ。

スーパー「主婦の店さいち」

秋保温泉の真ん中にあるごく普通の小さなスーパー。しかしここでは、平日は5,000個、土日は10,000個も売れる名物「秋保おはぎ」の販売をしているのです。あまりにも美味しいと評判でテレビでも紹介されたほどで、県外からも買いに来る方もいるのだとか。

小豆は北海道産、もち米類は宮城県産を使用し、一般的なおはぎよりも砂糖の量を少なくしているので、しつこい甘さはありません。その分塩気が感じられ甘じょっぱいのも人気の理由の1つ。

味は、あんこ・ゴマ・きなこの3つ。全部食べたくなってしまいますが、添加物不使用のため購入日に食べ切らないといけません。

ガラス工房「元」

覗橋の近くにあるスタイリッシュな建物、ガラス工房「元(げん)」。ガラス工芸作家・佐藤元洋さんのギャラリーになっています。店内では様々なガラス製品が展示販売されており、どれも色鮮やかで透明感があります。中でも人気の作品は、吹きガラスで作られた万華鏡。ガラスで作られている万華鏡は非常に珍しく、万華鏡そのものが美しくてオブジェになります。

また、ガラス工房元では、吹きガラス体験ができることでも評判を呼んでいます。体験は小学生以上からで、コップや小鉢、小皿などのオリジナル作品が作れます。オーナーの佐藤さん夫妻が丁寧にサポートしてくれますから、初めてでも安心。事前に作りたい作品のイメージを伝えておくと理想通りの仕上がりになるはず。

約1200度の高温で溶けたガラスを、金属製の細長い筒で巻き取り、その中にゆっくりと息を吹き込んでいきます。

慎重になり過ぎても慌ててもダメ。集中して息を吹き入れながら筒を回して形を整えましょう。大人の方へは声のみのアドバイスで、なるべく一人で作れるようにしてくれます。ドキドキしますが、上手くできれば嬉しさも倍増。

1つとして同じ模様や色がでない、完全にオリジナルのガラス作品は秋保温泉観光の、最高の記念品になります。

体験は20~30分程度。エプロンやアームカバー、軍手が用意されており肌が出ないように完全防備するので熱さ対策もバッチリ!

出来上がった作品は、急激な温度差で割れないように1日かけてゆっくりと冷まします。秋保温泉に宿泊する場合は翌日10時以降に受け取りに行くか、自宅に発送してもらうことも可能。

体験料金・1点3,000円。

当日でも状況次第では体験できますが、基本的には準備の都合上、前日までに予約が必要なので、旅行の予定が決まったら早めに予約を入れるようにしてください。

秋保大滝

落差55m、幅6mの秋保大滝。日本三名瀑の一つに数えられています。また、夏は緑に挟まれた大滝を、紅葉の時期は赤や黄色に彩られた大滝を楽しめる絶好の紅葉スポットとしてもお薦め。

秋保大滝の入り口は「秋保大滝不動尊」になっており、お堂の右側を進んでいくと「滝見台」に到着。駐車場からは約100mの距離。

滝を正面から、そして少し上から見られるので、滝として落ちる前の水の流れや滝口まで確認できます。滝見台にいても水しぶきが飛んできて、カメラやスマートフォンが濡れるほど。ここからでも迫力がありますが、滝壺まで降りていける遊歩道が整備されていますので、足腰に自信のある方、そして歩きやすいスニーカーの方はぜひ近くまで行ってみましょう。滝見台からは800mでかなりの急こう配なので、復路での上りが少々きついことは覚悟必須。

自家用車の場合は、滝の下側まで行ける車道と駐車場があるので、車で移動するのもお薦め。

下から見上げる秋保大滝は水量が多く、見応え抜群!見るだけでも大迫力!!お腹に響くようなゴォォォという滝の落ちる音と、大きく立ち上がる水煙に圧倒されます。

飛んでくる水しぶきが冷たくて気持ちいい!マイナスイオンもたっぷり。体の中からリフレッシュされます。

流れ落ちた水は川となって、留まることなく下流へと進んでいきます。

滝見台まで戻ってきたら、すぐ近くの不動茶屋で「竹とうふ」を頂きます。

おぼろ豆腐と竹エキスで作られた豆腐を、竹の器に入れて寝かした秋保名物の竹とうふ。竹エキスには数種類のアミノ酸が含まれているので健康食にもなっています。

それから江戸時代後期より伝授されている製法で作られた「三角あぶらあげ」もお薦め。鰹節と水菜がたっぷりトッピングされてボリュームがあり、小腹が満たされます。

秋保大滝の上流には「すだれ滝」があります。落差は約3mとそれほど高くはありませんが、幅が約40mあり、文字通り白いすだれのような滝がエメラルドグリーンの川に落ちていきます。秋保大滝が力強く男性的な印象ならば、すだれ滝は美しい女性的な滝と言えるでしょう。

ただし、見るためには秋保大滝不動尊前の駐車場に隣接する「秋保大滝植物園」に入園しなくてはなりません。秋保大滝植物園は、蔵王山系の植物を中心に約15,000本の樹木や草花が手入れされ、四季を感じられる植物園になっています。

入園料 大人240円・高校~大学生180円・小中学生120円

秋保大滝へのアクセス

秋保温泉湯元地区から自家用車で約14km、20分ほどの距離にある秋保大滝。自家用車での移動は問題ないのですが、バスの本数が非常に少ないので注意が必要です。

平日は仙台市営バスを、土日祝は宮城交通バスと仙台市営バスを上手に組み合わせて計画的に行動するようにしてみてください。

秋保大滝不動尊

秋保大滝入口に祀られた秋保大滝不動尊は正式名称を滝本山西光寺と言い、山形県山寺・立石寺の奥の院になっています。立石寺は松尾芭蕉が詠んだ句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」でおなじみですね。

現存する秋保大滝不動堂は文政8年(1825)に再建されたもので、安置されている不動明王像は、現存する金銅不動明王としては日本一の大きさ!像高3.3m、胴廻り5.1mもあり、圧倒的な迫力。いかにも巨大なパワーを持っていそうな雰囲気を醸し出しています。

秋保大滝不動堂の周りをぐるりと回ってみると、見事な彫刻がいくつも見られますが、その中で「鯉」が隠れているので探してみてください。見つけられると「恋が実る」のだとか。すでに恋愛成就されているなら、2人の絆をより強くしてくれます。

スズメのお宿

秋保大滝の350m程手前に「おかえりなさい」と出迎えてくれる蕎麦屋があります。農家を改築したような店構えは、一歩店内に入ると実家に帰ってきたような雰囲気に。

目に飛び込んでくる囲炉裏は、席が空くまで待っている場所。この囲炉裏で川魚を焼いてもらえます。

秋保の清水で打つ蕎麦は、コシがある太めの田舎そば。お薦めは10種類以上の山菜が入った「富士山のてんこもりそば」。蕎麦の量は3玉盛りで、とても1人前の量とは思えません!自家製の幸せを呼ぶ紅白の辛味大根が見た目のアクセントになり、蕎麦もさっぱり頂けます。自家製の漬物もついておりこれ以上ないボリューム!

店主は器にもこだわり、「めごひめそば」は伊達政宗の妻「愛姫」の家紋入り器でいただけます。

帰る時には「いってらっしゃい」の言葉でお見送りしてくれる、アットホームな蕎麦屋です。

秋保温泉湯元地区にあるカフェレストラン「フォルテシモ」は、スズメのお宿店主の息子が営業している店。フォルテシモで提供される蕎麦は、スズメのお宿の店主が手打ちしたものなので、秋保大滝方面まで訪れる時間がない方でも湯本地区でスズメのお宿の蕎麦が食べられます。


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