松島


日本三景のひとつに数えられる名勝地、松島。260余りの島々が点在し、古くから歌に詠まれたり描かれたりしています。

「松島や ああ松島や 松島や」でもお馴染み。この句は松尾芭蕉が詠んだとされていますが、実際は田原坊の「松島や さて松島や 松島や」が原型になっているそうです。松尾芭蕉も句を詠もうとしましたが、松島があまりにも綺麗すぎて言葉も出なかったとか。

それほど美しい松島ですが、計画的に行動すれば1日で観光することが可能な広さです。遊覧船にも乗って海から松島を眺めたり松島名物を食べ歩きしたりするなど、充実した1日になります。

雄島と渡月橋

松島が素晴らしい景勝地としての人気になったのは明治時代以降。それまでの松島は、死者を供養するための霊場でした。また、多くの僧侶が厳しい修行を行うために訪れていた場所でもありました。

その痕跡を残すのが「雄島(おしま)」。雄島には死者の成仏を願って建てられた石碑が点在しています。修行僧が経文を唱えながら彫ったと想像できる岩窟もあり、内側にはや石仏像や法名が刻まれています。

かつて108あった岩窟ですが、現在では50ほど。時代の流れとともに風化しているようです。

この地が「松島」と呼ばれるきっかけとなったのも、ここ、雄島から。

長治元年(1104)に現在の鳥取県から雄島に渡った僧侶・見仏上人が12年間雄島に籠もり、法華経六万巻を読誦して法力を得ました。その功績が京の都にいる鳥羽天皇にまで届き、千本の松の苗木が贈られたそうです。

そのため当時の雄島は千本の松の島で「千松島」と呼ばれていましたが、いつしか千松島は松島全体のことを指すようになり「千松島→松島」と呼ばれ、御島もまた、松島の中で最も由緒ある島であることから、雄(ゆう)なる島「雄島」と言われるようになりました。

雄島こそ松島の原点。

観光客で華やいでいる島々とは違う、松島のもう一つの姿にも興味が湧きます。

雄島へ渡るために架けられている「渡月橋(とげつきょう)」は、「縁切り橋」と言われています。縁切り橋という言葉のイメージから悪縁を断ち切る橋と考えられがちですが、渡月橋は悪い習慣や目標に向かう際の怠け癖を断ち切る意味合いが込められています。

松尾芭蕉が雄島を訪れた際に、俗世間と離れて歌人として出家しようという強い意志が橋に込められたことから、縁切り橋となったようです。

渡月橋で何か決意してみるのも、旅の思い出になりそうです。

五大堂と透かし橋

遊覧船乗り場近くの小島に建てられている「五大堂(ごだいどう)」は、誰もが訪れる松島観光に外せない定番スポット。松島を紹介する雑誌やパンフレットでも使われているほど、松島のシンボル的存在。

五大堂は、807年に坂上田村麻呂が毘沙門堂を建てたことが始まりです。後に慈覚大師が五大明王像を安置したことから五大堂と呼ばれるようになりました。

現在の建物は1604年に伊達政宗が再建したもの。実は政宗の隠し砦と言う説もあるようです。時代は違くとも、ここに伊達政宗が立っていたのかと想像するとちょっと感動します。

五大堂から見る朱色の福浦橋や松の木の間から見える島々は風景画のようなので、素敵な写真になりそうです。海が目の前で、松島がぐっと近くに感じられます。

五大堂は東北地区では最古の桃山建築で、国の重要文化財に指定されているほど歴史的価値の高いもの。瑞巌寺の前に、瑞巌寺を守るように建てられており、東日本大震災の時には五大堂があったから瑞巌寺にまで津波が来なかったそうです。

建物は細部にまで細かな細工が施されており、五大堂四面にはそれぞれの方角に合わせた十二支の彫刻が彫られており実に見事!

五大堂をぐるりと1周歩いてみましょう。北にある子年(ねずみ)から時計回りにスタートし、十二支が順に並んでいます。南の方角の午年(うま)は五大堂の看板に隠れてしまっていますが、横から覗けば見られます。ちなみに五大堂の看板は「五太堂」となっていますが、これは筆の遊びなので「五大堂」で間違いはありません。

厨子の中に安置されている五大明王(不動明王・降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王)は、慈覚大師の手彫りだと伝えられています。

秘仏とされ、33年に一度開帳されます。次は2039年で祭礼日は8月20日。実に待ち遠しい。

五大堂は無料で拝観できますが、日没には閉門するので時間には注意しましょう。

五大堂がある島へのアクセスは、赤い欄干が特徴の「透かし橋」を渡っていきます。透かし橋と言う名の通り、橋の板で作られており隙間から海が見えます。

江戸時代からあったとされる透かし橋は、「足元よく見て気を引き締め、身も心も乱れないように」してから参拝するのが目的。なるほど。

透かし橋はそれほど高くはありませんが、やはり足元に海が見えると少々恐くなります。吊り橋効果があるのでしょうか、別名「縁結び橋」とも呼ばれ、好きな異性と渡ると思わず手を取り合うことから恋愛成就するのだとか。

また、カップルが渡ると「浮かれていないで足元をしっかり見て相手を見定めなさい」と戒めているということです。

透かし橋から足元の写真を撮る方が大勢いらっしゃいますが、スマホやカメラを落としたら拾えません。くれぐれもご注意。

松島城

五大堂近くを歩いていると、建物の隙間から城が見えることがあります。それは、本物のお城のように作られた「松島城展望台」。この展望台は昭和初期に建てられた松島城観光ホテルの一部で、当時は天守閣に宿泊できる大正ロマン溢れる宿として人気でした。しかし、残念ながら平成15年(2003)に廃業となり、現在では天守閣の形をした建物が残され、有料展望台として利用されています。

天守にはベランダがグルッと1周付いており、松島湾~松島の町並み~山側まで360度眺められます。晴れた日には本当に気持ちの良い場所なのですが、意外と観光客には知られていない穴場的スポットですから、混み合うこともなくゆっくりと景観を楽しめます。

3Fの展望台までは急な階段を上るので、足腰に不安のある人は気をつけて。

観覧料 大人300円、学生200円

福浦島と福浦橋

全長252m、幅2.6mの朱色が目を引く「福浦橋(ふくうらばし)」は、福浦島(ふくうらじま)と陸とを結んでいます。橋の端からの撮影は絶好のSNS映えポイント。朱色の欄干が見事に遠近感を出していて凄いです!

福浦橋はライトアップされます。桜のピンク・松の緑・松島湾の青と、季節に合わせて色が変化するので、訪れる時期で異なる色味の福浦橋が見られます。

満月を含む3日間は消灯する粋な計らいも。日本百名月に認定された「松島にのぼる月」を楽しめます。

福浦橋を渡った先にある福浦島は、赤松や杉、四季折々の草花など約250種が自生する県立自然植物園。

島内は遊歩道が整備されているので、ゆっくり歩いても30~40分ほどで一周回ることが可能です。ただし多少のアップダウンはあるので、歩きやすいスニーカーがベストです。

島の南側には弁天堂があり、お堂の壁一面に小さなだるまがいっぱい!きれいに並んでいる光景にビックリします。固定されているかと思いきや、ただ置いているだけ。落ちないのでしょうか・・・

弁天堂はカップルで来ると弁天様が嫉妬して別れさせてしまうという言い伝えがあります。

島内にある茶屋では「ひやしあめ」がいただけます。ひやしあめをご存知ですか?冷たく冷やされた飴の事ではありません。関西方面では割とポピュラーな飲み物ですが、関東以北ではほとんど知られていません。

水飴を水で溶いて生姜の絞り汁を入れて作った「ひやしあめ」。生姜がピリッと効いているけれど、とても甘い飲み物です。暑い時期に飲むと元気になれる爽やかな味わいで、癖になります。

福浦橋通行料 高校生以上200円・小中学生100円

瑞巌寺

天長5年(828)、慈覚大師によって創建されたとされる「瑞巌寺(ずいがんじ)」は、伊達家の菩提寺でもあり、松島観光では定番スポット。

火災などが原因で廃墟同然になっていた瑞巌寺を、伊達政宗が慶長14年(1609)から5年の歳月をかけて再建させました。

本堂と庫裡は国宝、御成門と中門は国指定重要文化財に、それぞれ指定されています。特に庫裡はとても大きな建物で、日本三大庫裡のひとつに数えられているほど立派。

※庫裡=住職や家族の住む所や寺の台所のことで、本堂と庫裡がセットで寺院を構成

桃山様式の華やかな特徴が随所に現れている瑞厳寺。唐戸や欄間の細やかな細工、襖や床の間に描かれている豪華な絵画に思わずため息が溢れます。

境内にある宝物館「青龍殿」には、奥州一の禅寺と称される瑞巌寺の什宝(じゅうほう=家宝として秘蔵するもの)が3万点ほど展示されています。どれも歴史的価値のあるものばかり。

甲冑を身に着けた等身大の伊達政宗の木像もあり、政宗の遺言に従って両目が整っています。

瑞巌寺にも岩窟遺跡群があり、何体もの石仏が祀られています。かつて松島が霊場であったことを彷彿とさせる場所です。

境内をぐるりと見て回ると30~40分ほど必要ですが、訪れる時期により営業時間が異なり、冬季は15時30分にクローズするので早めに訪れるようにしましょう。

拝観料 高校生以上700円・小中学生400円

円通院

瑞巌寺の西隣にある「円通院(えんつういん)」は、10代藩主2代伊達忠宗の次男、伊達光宗の墓として建てられました。伊達光宗は伊達政宗の孫にあたる人物で、1645年に日光を参詣した後から体調が悪くなり、19歳という若さで亡くなります。一説によると、文武両道に長けていた光宗を幕府が恐れ毒殺したとも言われていますが、真実は定かではありません。

円通院には、白い砂と苔で松島を表現した「天の庭」と、人生を表現した「地の庭」で構成された「石庭」があります。また、心地池の庭やバラの庭も見事で、円通院は別名バラ寺と呼ばれるほど。

四季の移ろいを感じさせてくれる円通院の庭ですが、特に紅葉の季節は大変人気で、心字池に映り込むもみじは一番の見所。期間限定でライトアップを行っています。

奥まで進むと、伊達光宗の霊廟・三慧殿(さんけいでん)に着きます。

厨子にはバラの挿絵。そして、スペード・クローバー・ダイヤ・ハートの形が隠れています。厨子の中に安置されている、白馬にまたがった伊達光宗像の姿が凛々しいです。

さすがに間近で見ることはできませんが厨子の全体は拝見できますし、きらびやかで細かなデザインは必見なので、円通院に訪れたら奥まで足を進めてみてください。

円通院で人気なのが、数珠作り体験。天然石・ガラス・プラスチックから好きな素材を選んでオリジナルの数珠を作ることができます。

数珠には並べ方に決まりがあるので、説明を受けてから作り始めます。天然石を選ぶと完成後に選んだ石の説明をしてくれます。通常は20分ほどで完成しますが、中には悩みに悩んで2時間以上時間を費やす人もいるとか。それだけの思いを込めて作るオリジナルの数珠、強力なパワーストーンになること間違いなしです。

※材料や石の大きさによって料金は異なりますが、1,000円~8,000円程度で体験可能。

三門をくぐってすぐ左手にある「縁結び観音」への参拝も忘れずに。一体500円の縁結びこけしの体に願いを書いて御本尊様に良縁をお願いします。

拝観料 大人300円・高校生150円・小中学生100円(数珠作り体験をする場合は拝観料無料)

ライトアップ時期 10月下旬~11月下旬
毎日17時30分~21時
円通院夜間拝観料 大人500円・小中学生200円

縁結びコース

若い女性を中心に、人気の松島の観光地巡りで「縁結びコース」があります。

松島で有名な3つの朱色の橋を回るのですが、縁結びコースは橋を渡る順番がとても重要!

順番を間違うと意味がないので気を付けてください。

  1. 雄島の渡月橋(縁切り橋)
  2. 福浦島の福浦橋(出会い橋)
  3. 五大堂の透かし橋(縁結び橋)
  4. 円通院でこけしに願い事を書く

渡月橋で悪縁や迷いを断ち切り、福浦橋で良縁に出会い、透かし橋でしっかりと結ばれます。最後に円通院の縁結び観音に願掛けをして、縁結びコースをコンプリート!

このように縁結びコースに沿って巡るのも、面白いです。

※縁結びコースは、福浦橋通行料・円通院拝観料・縁結びこけし代が必要です。

グルメ

牡蠣

旅の楽しみのひとつに地元グルメがあります。松島には海産物を扱うお店が多いですが、特に有名なのが牡蠣とあなご。

牡蠣は冬がシーズン。10月~3月には「かき小屋」がオープンし、牡蠣の食べ放題が体験できます。人気なので予定が決まっている人は早めの予約が安心です。

また、「松島カキフライバーガー」で有名な「かき松島こうは 松島海岸駅前2号店」では、「牡蠣のひつまぶし」が食べられます。

牡蠣の甘煮がたっぷり乗ったひつまぶしは、濃厚ミルクのような牡蠣とタレの甘味がベストマッチ!2杯目はオイスタースープをかけて「牡蠣ダシ茶漬け」として楽しめます。まさに牡蠣づくしのひつまぶし!アレンジの効いたメニューは牡蠣専門店ならでは。

あなご

夏に松島を訪れた人にお薦めは、あなごです。松島湾はあなごの生育に適しており、脂が乗って旨みがギュッと詰まったぷりっぷりのあなごが育ちます。

あなご丼や煮あなご丼などが食べられるお店が観光ポイント周辺にはたくさん立ち並んでいるので、看板メニューを比較しながらお店を選ぶ楽しみを味わってください。

田里津庵(たりつあん)

松島観光の中心地から少々離れてしまいますが、賑やかな観光地から離れてゆっくりとあなごを堪能できるとしておすすめの店が、牡蠣とあなごの専門店「田里津庵(たりつあん)」。

この店の「あなごひつまぶし」は最高の一言!これを目当てに松島に訪れる方がいるほどの人気メニュー。

三陸産がメインの国産穴子を酒蒸ししてからじっくりと焼き上げ、料理長が継ぎ足して守ってきた秘伝のタレで、ふんわりしたあなごと濃厚な味わいが楽しめます。2杯目は利尻・日高産の2種類の昆布と鰹節の一番出汁で。

冬の田里津庵は「究極のカキフライ」が人気。牡蠣へのこだわりはもちろん、パン粉や揚げ油、タルタルソースに至るまで徹底的に料理長がこだわりぬきました。温度の異なる油で2度揚げされたカキフライは、外はサクサクで中はジューシー!きっと今までに食べたことのないカキフライに出会えます。

ロケーションも抜群な田里津庵で、松島の絶景を見ながら頂く贅沢なランチ。これぞ観光の醍醐味です!

田里津庵 宮城郡利府町赤沼字井戸尻132-2
松島海岸駅からタクシーで約10分、または、JR仙石線・陸前浜田駅から徒歩で約10分

笹かまぼこ&むう

松島城展望台の近くにある「松島蒲鉾本舗松かま」では、笹かまぼこの手焼き体験ができます。炭火でじっくりと焦げ目を付けた笹かまぼこは良い香り。笹かま本来の美味さも引き立ちます。

ただし、焼き過ぎは火傷レベルなので要注意。

また、同店では、松島でしか食べられないお豆腐の揚げかまぼこ「むう」もお薦め!ネーミングも丸いフォルムも実に可愛らしいむうは、魚のすり身と一緒に大豆が入っているため、笹かまぼこよりもふわふわした優しい食感が楽しめます。

食べ歩きしやすいように2個を1本の串に刺してあり、いつでも揚げたてを提供。外側はプリッ、中はふんわり。油で揚げているけれどカロリーは低いので、何本でも食べられそう。

塩味がついているためそのままでも美味しいですが、わさび醤油につけて食べても美味しくいただけます。

牡蠣カレーパン

遊覧船乗り場近くの「パンセ松島店」では、牡蠣が丸ごと入った「牡蠣カレーパン」が大人気!カレーにも牡蠣エキスがたっぷり含まれています。松島限定ですから食べないと後悔するかも。辛いのが苦手な人には宮城県らしく、ずんだあん入りの「ずんだメロンパン」もお薦めです。

仙台から松島へ訪れるなら

電車で仙台から松島にアクセスする場合にお薦めなのが、マリンゲート塩釜から出港している丸文松島汽船株式会社の「芭蕉コース」の利用。松尾芭蕉と同じように塩釜から船で松島へアクセスします。

このルートで松島に浮かぶ小島を見て回った方が、見事な景観美の島が後半に登場するため徐々に感動が大きくなり、最後まで飽きずに楽しめるメリットも。

まずはJR仙石線・仙台駅から乗車し、30分ほどで本塩釜駅に到着。そこから徒歩約10分でマリンゲート塩釜に着きます。

約50分の塩釜湾 → 松島湾クルーズを楽しんで、松島海岸で下船後は徒歩で松島観光スポットを巡ります。

帰りはJR仙石線・松島海岸駅から仙台駅まで約40分。

クルーズの乗船時間を上手に利用しつつ移動手段としても使え、塩釜湾に浮かぶ島々まで眺められるお得なプランです。

乗用車なら

乗用車で松島にアクセスする場合、混雑時期には周辺道路に渋滞が発生します。そこで、観光の中心地からほんの少し離れた駐車場に車を止めて、徒歩で観光ポイントまで向かい、歩いて見て回る方が時間のロスを防げます。

各見所は徒歩で充分回れる範囲ですから大丈夫!


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