高千穂


宮崎県の北の端、九州山地の中程に位置する「高千穂」。人口12,000人ほどの小さな町です。

ここは遥か昔から神話と伝説の街として知られてきました。特に有名なのが「天岩戸神話」と「天孫降臨」、この2つの神話ではないでしょうか。

高千穂観光において、この2つの神話を知っていることが大前提!とても有名な神話なので知っている、という人も多いでしょうが、一度確認しておきましょう。

天岩戸神話(あまのいわとしんわ)

昔昔、天照大御神(あまてらすおおみかみ)がいました。天照大御神には須佐之男命(すさのをのみこと)という弟がいましたが、これが実に乱暴者。あまりにもひどい暴れっぷりに困り果てた天照大御神は、洞窟の奥に隠れて岩戸を閉めてしまいます。

太陽の神であった天照大御神が隠れたことで天界も下界も真っ暗になり、作物は育たず人々は病気になるなど、皆、困り果ててしまいます。

そこで、八百万の神々(やおよろずの神々=大勢の神様達)が集まって話し合いをしました。

いろいろと知恵を出し合った結果、まず初めに鶏を鳴かせてみることにしました。鶏が鳴いたら太陽が昇るからです。

しかし、鶏を鳴かせてみても岩戸は開きません。鶏の鳴き声作戦は失敗に終わります。

次に天照大御神の興味を引く作戦を行いました。岩戸の前で天鈿女命(あめのうずめのみこと)が舞を踊り、他の神々が盛り上がります。

すると天照大御神は不思議に思います。「自分が閉じこもっているから世の中は真っ暗で困っているだろうに、何故あんなにも楽しそうなのだろう・・・」

気になった天照大御神は、岩戸を少しだけ開けて尋ねます「何故楽しそうなのですか?」と。その問いに「天照大御神様よりも美しい神様が現れたのです。今、お連れ致しますね。」と言い、天照大御神に鏡を見せました。

天照大御神は鏡に映っている人物が自分だとは思わずに、鏡が良く見えないからと天岩戸から体を出します。

その瞬間、手力男命(たぢからをのみこと)が岩戸を開け放ち、天照大御神を外に出すことに成功したのです。

世の中が明るくなり、心を入れ替えた須佐之男命は高千穂を離れました。そして島根県出雲の国に向かいます。これがのちに出雲で「八俣大蛇(やまたのおろち)退治」の神話が誕生することになるのです。

ちなみに手力男命が開け放った岩戸は遠くまで飛ばされ、下界に落ちました。日本の真ん中あたり、長野県戸隠に落下した岩戸は「戸隠山」となり、戸隠の地名になったと言われています。

天孫降臨(てんそんこうりん)

天照大御神が下界を見下ろすと、世の中は様々な揉め事が起きていました。そこで天照大御神は自分の孫にあたる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に、地上に降りて争いごとを収めるように命じます。

その時に皇位継承者の証として瓊瓊杵尊に持たせたのが、鏡・勾玉・剣の「三種の神器」。そして人々が飢えないようにと稲穂も持たせました。

こうして瓊瓊杵尊は、葦原中国(あしはらのなかつくに)に降り立って世の中をまとめていくのです。

※葦原中国=天界の高天原(たかあまのはら・たかまがはら)と地下の黄泉(よみ)の国との中間で、現実の地上界のこと。

ちなみに三種の神器は、

  • 天岩戸神話で天照大御神が覗き込んだ鏡
  • 天鈿女命が岩戸の前で舞を踊る際に榊の木にぶら下げていた勾玉
  • 須佐之男命が退治した八俣大蛇のしっぽから出てきて、姉である天照大御神に献上した剣

後に瓊瓊杵尊は下界の娘、木花開耶姫(このはなのさくやひめ)と結婚します。これが初めて天界の神と下界の者が結ばれた話。

二人の間には子供が生まれ、そして孫ができました。この孫こそが神武天皇。神武天皇が即位したとされる2月11日は、建国記念の日になっています。

建国記念日にはこのような神話があるのです。

では、神話になぞって高千穂の旅をスタートです。

天岩戸神社

天照大御神がお隠れになった洞窟は、天岩戸神社にあります。

社域は岩戸川を挟んで「西本宮」と「東本宮」、上流に「天安河原」があり、この3つで成り立っており、それぞれが少しずつ離れているので社殿は大きくないものの社域は広くなっています。

西本宮は天照大御神が岩戸隠れした洞窟をご神体としてお祀りしています。そのため本殿がありません。

現在の洞窟は長年の浸食と風化、台風などの影響を受けて形が大きく崩れ、私達がイメージする洞窟の面影はありません。今の姿は崖にできた割れ目のような形になっているそうです。

どんな形であろうとも実際に見たいです。希望すれば見学することができます。

所要時間20分ほど、神職がとても分かりやすく案内してくれると大変評判です。指定の時間までに休憩所に集合し、そこからぞとぞろと西本宮の裏側に回り洞窟を見ます。

岩戸川の対岸の岸壁中腹に洞窟があるのですが木々に覆われ自然と一体化しているので、洞窟そのものを目に焼き付けることは厳しそう…

それでも巨大なエネルギーはひしひしと感じられます。

かつては遊歩道があり洞窟を自由に見学できたのですが、今は決められた時間内でしか見られません。それでも30分毎に天岩戸案内ツアーが行われていますから、それほど待ち時間や混み具合を気にすることはありません。

ツアー料金は無料ですが「お気持ち箱」の用意があります。また、とても神聖な区域のため写真撮影やビデオ撮影など一切禁止になっています。

天岩戸であったとされる洞窟の中から実際に石器や土器、鏃(ぞく=矢の先端に付けて突き刺す部分)が発見されています。出土したものは鳥居の近くにある「天岩戸徴古館(あまのいわとちょうこかん)」で見ることができます。

天岩戸徴古館の入館料 大人150円・小人50円

西本宮境内でチェックしておきたい木を2本ご紹介。

1本目は、西本宮の御神木である「招霊の木(おがたまのき)」。

岩戸の前で天鈿女命が舞を踊る時に両手に持っていたとされる木です。神聖な木とされる招霊の木は御神木になっていて、春には白い小さな花が咲き、秋には堅くて赤い実がなります。

2本目は、葉と実が特異な形状を持つ「古代銀杏」。他には長野県諏訪でしか見ることができないとても貴重な木です。

西本宮から徒歩7分の場所にある東本宮は、天照大御神が岩戸から出て最初に住んでいたとされる場所に建てられています。ひっそり静かな東本宮に入ると、心が浄化されるような感覚になります。

御祭神は天照大御神。西本宮との違いはお祀りする対象が違うこと。西本宮は岩戸をお祀りしていますが東本宮は天照大御神ですので、かつては東本宮が天岩戸神社のメインになっていました。

西本宮には社務所があり神職が常駐、御朱印も頂けるので、天岩戸神社参拝というと西本宮に訪れる人が多いようですが、東本宮もセットで参拝してこそ天岩戸神社をお参りしたことになります。

本殿の裏手の大きな杉の木の根元に「御神水」があります。まるで木の根っこから湧き出ているような御神水は、透き通っていてとても綺麗。コンコンと湧き出る御神水は飲むこともでき、とても甘いのだとか。

御神水の近くにある「七本杉」も一見の価値あり。数えてみると9本?…9本の杉が仲良く横一列に並んでいます。しかし、左の2本は数に入れませんので「七本杉」なのです。この7本は根っこが繋がっていて、推測樹齢は600年。

この七本杉の斜め下、崖の中腹に天照大御神が隠れた洞窟があるのですが、残念ながら上からは見えません。ただし、洞窟に近いことは確かなので天岩戸洞窟&七本杉、ダブルの巨大なエネルギーが得られる場所といえます。

東本宮にも駐車場が用意されています。西本宮から徒歩での往復が心配な人は、自家用車で移動が可能。

天安河原

西本宮から北東へ10分ほど歩くと「天安河原(あまのやすがわら)」に到着。岩戸川を眺め川音を聞きながら歩く遊歩道は、夏は清々しく冬は凛とした空気が漂います。

岩戸川上流に位置する天安河原は、洞窟に閉じこもった天照大御神をどうやったら洞窟から出せるのかと、八百万の神々が話し合いをしたとされる場所。八百万とも言われる数の神々が集まったのだから日本有数のパワースポットです。日本全国からその御利益を求めて訪れるほど、人気の観光スポットになっています。

天安河原には間口40m・奥行き30m程の「仰慕窟(ぎょうぼがいわや)」と呼ばれる洞窟があり、思兼神(おもいかねのかみ=思慮を兼ね備えた神)を主祭神として祀られています。

また、石を積み上げると願いが叶うとして連日多くの観光客が石を積み上げていくので、見渡す限り積み上げられた石の光景が広がり、少々恐くなるほど不思議な世界観を醸し出しています。

石を積む時には、3・5・7、いずれかの数で積み上げると良いそうです。

天安河原に向かう途中に架かる「太鼓橋」もまた人気の願掛けスポット。橋の上に立って上流の方向に両手をかざし瞑想すると、パワーを授かるそうです。訪れてた際には是非やってみましょう。さらに太鼓橋は、神聖な場所と俗世界との「結界」ではないかとも言われています。太鼓橋の真ん中で立ち止まった時に何かを感じるかもしれません。

台風や大雨の後で岩戸川が増水すると、天安河原には行くことができません。訪れる数日前に大雨が降った場合には立ち入り禁止になっている可能性があるので、事前に天岩戸神社のホームページをチェックしてみてください。

また、岩戸川が増水すると積まれている石が崩れて元の河原に戻るそうです。それこそが八百万の神々が話し合いの時に見ていた岩戸川一帯の姿。石が積まれていない自然の姿の天安河原もちょっと見てみたい気もします。

西本宮・東本宮・天安河原までゆっくり周り参拝し、周辺のお土産や軽食を楽しむと所要時間は3時間~半日ほど必要。高千穂回遊バスで移動している人は、バスの時間に注意が必要。

休憩する時におすすめの店が、その名も「安河原(やすがわら)」という甘味処です。

ここの「小豆てんこもりソフトクリーム」は濃厚なソフトクリームに、こぼれんばかりの小豆がトッピングされて、甘党にはたまらない一品です。提供されるお冷は東本宮の御神水なので、なんとも贅沢な組み合わせです。

国見が丘

高千穂町北西にある標高513mの小高い丘「国見が丘」。名前の由来は、神武天皇の孫にあたる建盤龍命(たていわたつのみこと)が、筑紫(現在の福岡)を治めるために向かう途中にこの丘に立ち寄り、国を見下ろしたことから名付けられました。

国見ケ丘にはその神話を再現したモニュメントが建てられています。「国を見る」様子そのままのデザインから、神話を容易に想像できます。

また、国見ケ丘は冷え込んだ秋の早朝に雲海が見えることでも有名な場所。高千穂盆地に広がる雲海は、神話と伝説の街「高千穂」にぴったりの神秘的な光景。

頂上付近は綺麗に整備されていて車でアクセスすることが可能なので、天気予報を確認しタイミングを見計らって出掛けたいです。

高千穂神社

高千穂神社の創建は1900年前に遡り、非常に歴史のある神社として知られています。高千穂郷八十八社の総社で、主祭神は高千穂皇神と十社大明神(じっしゃだいみょうじん)。

高千穂皇神は3世代6柱の神々の総称で、「瓊瓊杵尊」と妃の「木花開耶姫」、この2人の子の「彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)」と妃の「豊玉姫命(とよたまひめ)」、さらにこの2人の子の「鵜葺草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)」と妃の「玉依姫命(たまよりひめ)」。まさに3世代が一同に祀られているのです。

十社大明神は三毛野命(みけいりののみこと)と妻子神、計10名の神の総称で、高千穂神社は、古くは「十社大明神(じっしゃだいみょうじん)」や「十社宮」と呼ばれていました。

「高千穂」という地名は、天孫降臨神話からきています。

天孫降臨

瓊瓊杵尊が地上に降りる途中、雲で周囲が見えなくなりました。困り果てていた時に大クワ・小クワと名乗る二人の里の人が現れます。そして「あなた様がお持ちになっている稲穂から籾(もみ)を取り、それを四方に撒けばきっと晴れるでしょう」と伝えました。瓊瓊杵尊はその言葉通りに従うとみるみる晴れ渡り、空は明るく、太陽と月が輝き始めました。

そこでこの地を「智穂」と名付け、のちに瓊瓊杵尊の偉大さを称える意味で「高」を付けて「智穂→千穂→高千穂」となるのです。

ただし、穀物の神は山に居るものとされているので、高千穂の地名のルーツは怪しいとも言われています。真実は定かではありませんがロマンのあるお話です。

高千穂神社には3つのパワースポットがあります。ひとつずつ順番に巡っていきましょう。

はじめに高千穂神社の御神木になっている「秩父杉」。秩父杉は、源頼朝の命令で天下泰平の祈願に訪れた畠山重忠が、自らの手で植えたとされています。

樹齢800年以上で高さはおよそ55m、境内でも一際目立つ大木。畠山重忠の出身地が秩父であったことから、秩父杉と呼ばれるようになりました。

秩父杉の前に立ち、上を見上げてみましょう。その大きさと高さに圧倒されます。

次のパワースポットは、根元がひとつに繋がっている「夫婦杉(めおとすぎ)」。2本の杉の周りを、夫婦や恋人同士で手をつないで時計回りに3回まわると、夫婦円満・家内安全・子孫繁栄の願いが叶うと言われています。

伝説を信じて手を取り合えばもう仲良し!仲良くなりたいというその心が大切です。あとは永遠に円満でいられるように、夫婦杉からパワーを授かりましょう。

3つ目のパワースポットは「鎮石(しずめいし)」。石にそっと触れてみてください。徐々に心が落ちついていくような感覚になります。それもそのはず。鎮石は心の悩みや世の中の乱れを沈めてくれる巨大な力を持つパワーストーンなのです。

鎮石は、高千穂神社の社殿を創建する際に用いられた古石。そして茨城県鹿島市の「鹿島神宮」にある「要石(かなめいし)」は、鹿島神宮を創建する際に高千穂神社が贈ったもの。

日本のパワースポットをつなぐ「レイライン(leyline)」の西の端が高千穂神社で、東の端が鹿島神宮になっています。これは果たして偶然なのか。鎮石と要石が惹かれ合っているのでは、と考えてしまいます。

高千穂では毎年秋から新年にかけて「高千穂神楽」と呼ばれる舞のお祭りがあります。高千穂神楽は地域ごとに夜通し行われ、その中で代表的な4つの舞は、高千穂神社の神楽殿で見られると観光客に大人気。

各集落の神楽の舞手が舞ってくれますから、かなり本格的な舞が楽しめます。国の重要無形民俗文化財に指定されている「高千穂神楽」を存分に楽しみたいです。

高千穂神楽は舞が中心で、セリフは無いに等しいので、ストーリーを理解しているとさらに興味深く見られます。

代表的な4つの舞はこちら

  • 「手力雄(たぢからお)の舞」・・・「手力雄命(たぢからおのみこと)」が、天照大御神が隠れている岩戸を探し当てる時の舞
  • 「鈿女(うずめ)の舞」・・・岩戸の前で天鈿女命が天照大御神を誘い出すための舞
  • 「戸取(ととり)の舞」・・・手力男命が岩戸を開き投げ飛ばした時の舞
  • 「御神体(ごしんたい)の舞」・・・「伊邪那岐命(いざなぎのみこと)」と「伊邪那美命(いざなみのみこと)」が夫婦仲良く酒を作り、飲んで酔っ払い、抱擁しあう夫婦円満の舞。

高千穂神楽は、毎日20時〜21時までの1時間公演で、受付は19時から。畳の上に座るため座布団や小さな椅子の持ち込みは可です。

中学生以上700円・小学生まで無料

高千穂峡

高千穂町中心部からやや南側に位置する高千穂峡(たかちほきょう)は、日本でも指折りの景勝地として有名な場所。その見事な景観は旅行会社のパンフレットや旅行雑誌などで紹介写真として使われることが多いため、一度は目したことがある方も多いでしょう。

高千穂峡として知られていますが、正式名称は五ヶ瀬川渓谷(ごかせがわけいこく)といいます。

高千穂峡は、約12万年前と約9万年前の2回にわたる阿蘇山の大噴火によって誕生しました。噴出した数百度の軽石流が五ヶ瀬川の峡谷沿いに帯状に流れ、堆積物が冷却固結し溶結凝灰岩となって柱状節理が生まれます。

高千穂峡の柱状節理は溶岩が冷えて固まった岩石ではなく、火山灰の塊であることも珍しいのですが、侵食されやすい特徴があるため五ヶ瀬川の流れによってV字峡谷となり、これが高千穂峡を作り上げました。高いところで100m、平均約80mの断崖が東西に約7kmも続いており、国の名勝・天然記念物に指定されています。

川の近くの峡谷には「ポットホール」と呼ばれる丸くえぐられた場所がいたるところにあります。これは岩の割れ目に水が流れ込み、小石が割れ目でコロコロと舞って丸く削られてできたの。最初は小さな小さな穴だったのに長い年月をかけて作られた大きな丸いくぼみ(ポットホール)を見ると、途方もない時間の経過と自然の力を感じずにはいられません。

この他にも高千穂峡には見るべきポイントがたくさんあります!

高さ70mもある崖の「仙人の屏風岩(せんにんのびょうぶいわ)」、重さ約200tの「鬼八の力石(きはちのちからいし)」、そして鬼八の力石の近くにある「ハート石」は水量が多いと隠れてしまう、運が試される石。

趣の違う3つのアーチ橋が1つの渓谷にかかり、同時に見られるのは日本でもここだけの「高千穂三段橋(たかちほさんだんばし)」。

「おのころ池」に浮かぶ「おのころ島」は、下界が揉め事で溢れていた時に最初にできた国土だとされています。

おのころ池の水が流れ落ちて作られたのが「真名井の滝(まないのたき)」。高千穂峡の一番の見どころです。

日本の滝百選の1つに数えられている真名井の滝の周辺はパワースポットとして有名。マイナスイオン&パワースポットのダブルの力をたくさん得られる場所ですから、是非手漕ぎボートをレンタルして滝の近くまで行きましょう。

ボートは3人乗りで一隻30分2,000円。

夏は夜10時頃までライトアップされるので、昼間とはまた違った神秘的な景色を堪能できます。

深い峡谷なのであまり陽は入りませんが、冬は崖の上の木の葉が落ちるので陽が入りやすく、光に当たった滝の水しぶきはキラキラと光り、綺麗かつダイナミックな真名井の滝を見られます。運が良ければ真名井の滝にかかる虹が見られることも!

ここでまた1つ、神話です。

天真名井

瓊瓊杵尊が天孫降臨した智穂(高千穂)には水がほとんどなく、ようやく手に入れた水も不味くて飲めたものではありませんでした。そこで、瓊瓊杵尊は天村雲命(あめのむらくものみこと)に「水種をもらってきなさい」と命じました。天村雲命は命令に従い、もう一度高天原に上がり天照大御神から水種をいただき、下界に降りて水種を天真名井に混ぜます。

すると天真名井から冷たくて美味しい水がコンコンと湧いてきました。

現在も樹齢1300年を超える老木のけやきの根元にある天真名井からは、水が湧き出ています。中を覗き込むとビックリするほどの透明度!水が湧き出ている音が意外と大きく、コポッコポッと聞こえます。

水を飲むと長生きをして、悪い行いをした人が水を汲むと水が出なくなる言い伝えがあるとか。

高千穂峡の、おのころ池の後ろにそびえる柱状節理の割れ目から溢れ出ている「玉垂の滝」が、天真名井と同じ水脈で、玉垂の滝はおのころ池に注ぎ込み、真名井の滝へと続いていくのです。

阿蘇山の噴火と天真名井が作り上げた神々しい世界「高千穂峡」は、一度は訪れるべき観光地と言えます。

高千穂峡の駐車場は3ヶ所。

「御塩井(おしおい)駐車場」は500円。

一番の見どころ真名井の滝へも近く、小さいお子様連れや足腰に不安のある人にはおすすめ。ただし人気の駐車場のため週末は早い時間に満車になってしまいます。

「あららぎ駐車場」は300円。

神橋には近いですが、真名井の滝までは遊歩道を少し歩きます。景観を見ながら歩いているとそれほど遠くは感じないでしょう。途中に階段や坂などありますが、気になるほどではありません。

「大橋駐車場」は無料。

真名井の滝までは遊歩道を20~30分ほど歩きます。また遊歩道に行くまでに階段が多いので健脚の方向けかもしれません。観光で歩き回った後に、また歩いて駐車場まで戻る事も考慮しておきましょう。往路は下り坂ですが復路は上りで疲労度が増します。

高千穂峡は日本でも有数の観光スポットなので、週末や大型連休は非常に混み合います。繁忙期には無料の臨時駐車場が用意されシャトルバスで移動します。

とはいえ、なるべく朝の早い時間に行くのがベター。レンタル手漕ぎボートも繁忙期には4~5時間ほど待つことになったり、午後には受付が終了してしまう事もあります。ボートに乗りたい場合は、まず初めに受付をしてからゆっくりと観光に回りましょう。

また、天真名井は高千穂峡から約2.6km、自家用車で7分ほどの街の中にあります。高千穂回遊バスを利用する場合、高千穂バスセンターで下車して600m、徒歩7分ほどで到着。

近くには天孫降臨で降り立ったとされる「くしふる峰」と、その中腹に創建された「槵觸神社(くしふるじんじゃ)」があります。

槵觸神社は高千穂八十八社のひとつに数えられており、くしふる峰そのものを御神体としているため、昔は社殿がありませんでした。しかし、元禄7年(1694)に当時の延岡藩主や村人たちの厚い信仰によって建立されます。

山の中にひっそりと佇む神社ですが、力強く男らしいパワーが感じられるとして人気になっていますので、時間が許す限り足を運んでおきたい場所の1つです。

アクセス

高千穂観光には「高千穂回遊バス乗車券」がとてもお得!大人600円・小人300円で一日乗り放題です。

今回ご紹介した「天岩戸神社」「高千穂神社」「高千穂峡」、そして「高千穂駅」「高千穂バスセンター」などに停車します。一番離れている天岩戸神社と高千穂峡間の乗車時間はおよそ30分なので、移動に時間を取られることはありません。

ただし便数が少ないため、各観光地では時間を見ながら動かないと乗り遅れる可能性大!高千穂回遊バスを利用する際には、事前にきっちりと計画を立てておくとスムーズに行動できます。


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